義理義理v(ハート)のバレンタイン

 

ほんのりと暖かい2月14日。

今年は土曜日で休みだが…、

やっぱり今年も渡さないといけないんだろうな…。

伸博は今丁度バレンタインライブの真っ最中だ。

きっとライブ終了と共にファンからチョコレート攻めだろう。

…アイドルは辛いな…;;(デビューも何もしてないが)

それに比べて俺は何故か疲れてしまうほど暇で、

チョコを作れと言わんばかりに嫌な空気が部屋に満ちている。

俺に背中を向けてパソコンをしている父さんの背も、

『チョコをくれ』と書いてあるように見えてしまう…。

「…作るか…。」

暇だし…、バレンタインだし…、と言い訳を頭に浮かべながら、

俺はキッチンへノソノソと向かっていった。

 

翌日の午後、俺はチョコを持ってある場所へ出かけた。

交響高校の近くにある公園。そこで人を待たせているのだ。

「おっ!ネット〜!!」

待たせていたのは伸博。伸博は自転車をとめる俺へ駆け寄った。

「昨日は大変だっただろ…?ゆっくりしたい所悪いな…。」

「いーんだよ!気にしない気にしない♪

それに、俺も用意してたからさ、丁度良かったんだよ。」

そう言って伸博は赤い包みをカバンから出した。

俺もカバンの中から小さな茶色の包みを出す。

「俺、料理はイマイチだから売ってたヤツだけど…、チョコレートな。」

「俺も小ぶりな物をいくつか…な…。」

包みを受け取ると伸博はふわっと微笑んだ。

「ハッピーバレンタイン♪」

俺も微笑んで自転車に乗った。。

「あぁ…。…それじゃあ…、もう1件行く所があるから…。」

「もう1件?…あぁ…、分かった分かった。行ってらっしゃい♪」

「…あぁ。」

俺はペダルをこいで懐かしいある家へ向かって自転車を走らせた。

 

「…………。」

懐かしい母さんと過ごした家。

その家に今はあの男が住んでいる。

元は自分の家なのに、ベルを鳴らす手が緊張で少し震えている…。

しばらくするとあの謎の猫を抱いた男、譜面が現れた。

「…何の用だ…?」

「…………。」

俺は黙って包みを渡した。

譜面も黙ってそれを受け取る。

それから譜面はその包みを持ったまま俺を見つめた。

…俺に視点を合わせて離さない…。

とりあえず何か話をする事にした。

「…今日が…、何の日か…分かってるよな…?」

譜面は首を傾げた。そして必死に唸って考える。

「…猫の日は2月22日だし…、節分はもう過ぎた…。…何かあったか…?」

…ダメだ…この人は…;;

俺はガックリとうな垂れた。

「…まぁ…、とりあえず包みの中身は後の楽しみにとっておこう…。」

「そうしてくれ…。それじゃあ…、俺はもう帰るからな…。」

俺は玄関から出ようとしたが、引き返した。

「???」

首を傾げる譜面に俺は黙って抱きついて、

「…ハッピーバレンタイン…。」

と呟いた。

「……あぁ…。」

譜面の指が俺の髪を梳く。

譜面から体を離し、俺は今度こそ玄関から出て行った。

その時俺の視野に入った譜面の顔は、なんとなく嬉しそうだった。

 

そして夜、居間で父さんがわざとらしく大げさなため息をついた。

…本当に困った父さんだ…。

俺は苦笑しながら父さんの前にガラス瓶を置いた。

中にはチョコレート。

伸博や譜面にあげたチョコより少し大きいチョコが5つ程入っている。

目を丸くしている父さんに俺は、

「ハッピーバレンタイン…。」

と言うと、父さんは俺を抱き締めた。

「コイツ〜!!わざと今日の夜まで渡さなかっただろ!!」

「さぁ…?何の事だろうな…?」

「そーんな事言う悪い子にはお仕置きだ〜!!」

 

…こうして夜は更けていった…。

…お仕置きの事に関しては聞かないで欲しい…;;

だが…、いつもより優しかったのは確かだ…。

 

END

 

*コメント*

…アホですね…。ンなバレンタインあるかい…!!

えーい!!イチャイチャしやがって畜生っ!!

今年はバレンタイン、誰もあげませんでした。

が、イベント大好きなMusic Battleの方々は絶対に渡すだろうな…と。

で、今回書いたのが指揮家+伸博。

本当は伸博出す予定は無かったのですが…、

やっぱり主人公なので登場させました。

…ネットさん…、やっぱり私の嫁に来ませんか…?(ヤメロ)

洗濯は干すと取り込むぐらいなら出来るので…、

お料理とお掃除を…(だからヤメロ)

タイトルはアホっぽいですが、なんとなくこの話に合ってるかな…と。

…っていうか…、ネットさん…、どんなお仕置きだったんですか?!(興奮/笑)

 

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