POLICEの敵は闇の中
プロの怪盗なら、昼間にお宝盗んでアピールしてもいいモンだけど、一般人は巻き込みたくないから闇夜を狙う。
…うーん、俺って紳士〜♪
狙いは『空白の瞳の熊』。
名前はゴツイが、つまりは目の取れたテディベアだ。
その熊を探す途中で面白いモノに出会った。
…今日はここにオウスJr.がやって来る…!!
俺は手を強く握った。
警備の薄いフロアで静かにオウスJr.を待った。
…人影が見える。
非常口の灯りに照らされて、すぐに誰か分かった。
…オウスJr.だ…!!
「おやおや、いつぞやのお人形。また追い掛けて来たのか?」
「…お人形ではない。『透百合』だ。」
お人形こと透百合の頬が薄く色付いた気がした。
人形のように真っ白で冷たい瞳の透百合は、カードを一枚突き出した。
「己が命に従い、貴様の悪行を止める…!!」
…昔はこんなんじゃなかったんだけどな…。
そんな思いを胸にしまい込み、俺は余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「まぁ立派なこと。だが、俺は依頼人との約束を守らなくちゃいけねぇんだ。譲れねぇな。」
透百合は攻撃をする気配は無いが、じっと冷たい瞳で俺を睨む。
本当の姿を知っているだけに辛い。
余裕の笑みだった眉は下がり気味だ。
「怪盗オウスにこだわっちゃ悪いか?オウスは正義の怪盗だ。その証明が出来るまで俺は続ける。」
「泥棒と呼ばれ続けてもか?!」
悲しみを帯びた叫びが響いた。
その声が容赦無く胸に突き刺さった。
…さっきの声で警察がざわめき始めたかもな…。
「俺はオウスJr.でいる事を誇りに思っている。だから…、」
俺は素早くクロロホルムを透百合にかがせた。
「オぅ…す……。」
眠る透百合に罪悪感を抱きながら、俺はその場を立ち去った。
「…あ、気が付いた!」
目が覚めてまず最初に護の顔が見えた。
「3階で倒れてたんだよ?」
…あぁ…、オウスJr.に薬をかがされて…。
「熊は…」
「盗られたよ…。」
やはり…。
俺は布団の下で拳を握り締めた。
ふと、気を失う前の記憶が蘇った。
罪で汚れた腕で崩れる俺を抱き締めたオウスJr.の温もりと、歪んだ顔…。
…やはり俺がオウスJr.を止めなければ…。
今までより更に強い決心を胸に抱いて、俺は再び目を閉じた。
オウスJr.の悲しみを隠した笑みが浮かんでは消え、俺の心を静かに乱した。
END
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