爆煙のノワー
「…今日も静かだな…。」
魔法屋で店番をしながら俺はウトウトしていた。
静かだが穏やかに活気づいてるノワーは、旅人が一時的に戦いを忘れられる平和の町。
俺の店では魔法のスキルを主に売っている。
平和な町だけあって、攻撃魔法のスキルの購入の条件は他の町に比べてかなり高いが…。
「…今日は早く店を閉めてエル・エークとルナティーでティータイムとするかな。」
俺は大きく伸びをした。
ドカーン!!!
爆音が静けさを破り、地面が激しく揺れた。
しかし、俺は動じない。
「…タルトだな。」
溜め息をついて俺は爆音のした隣の店へ向かった。
「…屋根は吹っ飛ばしても壁は壊さず…か。相変わらず器用な壊し方だな。」
俺は店からなんとか出てきた奴『タルト』へ声を掛けた。
「るせぇやい!…あーあ、ついこの前補修したばっかなのに…;;」
タルトはガックリとうなだれた。
この爆発はよくある事。
タルトは雑貨屋をやっていて、新商品開発の為に日々調合を繰り返している訳だが、調合の腕はあまり良くない。
成功する場合もあるが失敗の方が断然多く、時にこのような大爆発を起こしてしまう。
「…片付けと補修、手伝うぞ。」
「うー…、スフレには手伝って欲しくなかったけど仕方ない。そん代わり!手伝ったからって何もやんないからな!」
タルトと俺は仲が悪い。…というか、俺が仲を悪くしてしまっている。
素直になれればいいんだが…。
「…構わない。終わったら洋菓子店でゆっくりしよう。奢るぞ。」
「ふん!そこまで貧乏じゃないっての!でも、洋菓子店行くのは賛成!」
タルトは板やら金槌やらを持って、「フラトン!」と叫んだ。
フラトンは空中に浮く魔法だ。
…魔法は悪くないのに、何で調合は下手なんだ…;;
屋根に辿り着いたタルトは俺を見下ろして手を振った。
「スフレー!早く上がってこいよ!ー!」
「…あぁ、今行く。」
俺は出来るだけ動きやすい格好にする為ローブを脱いだ。
そしてタルトと同じようにフラトンを唱えた。
一通り修復を済ませた頃には、真上にあった太陽は赤く色付いていた。
俺達は遅いティータイムで疲れをとっていた。
「…な、スフレ、…今日はありがとな。」
素直なタルトの礼に驚き、同時に内心少し照れた。
「…別に。今度は手伝わないから。」
「今度なんて無いっての!」
…このやりとりが、どうやら俺は楽しいらしい…。
END
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