ノワーの優良店
今日は日曜日だから宿屋のお手伝いはお休み。
僕は公園の木陰で寝転んでいた。
いつも宿屋は食堂も兼ねているせいか賑やかだから、静かな場所に来るとホッとする。
キュ〜…
「…アハハ…。小腹減ったのかな;;」
僕は立ち上がって公園を出ていった。
小腹を満たすお店はパフェさんのお花屋さんのすぐ側。
いつも周りが甘い香りに包まれる洋菓子店。
その甘い香りに引き込まれるまま、僕はお店へ入っていった。
テーブルはほぼ満席。
カウンターには僕と同じぐらいの身長のとがった耳の人。
「いらっしゃいませ〜!!…って、クッキーか。久しぶりに顔見たぜ。」
彼は狩人のプリンさん。
日曜日になると、開店時間から閉店時間まで洋菓子店に入り浸る程甘党。
でも、外見年齢は僕とそんなに変わらないけど、実はエルフだから僕の10倍以上も年上。
エルフって不思議だね…。
「シフォンに作る方専念してもらってんだ。クッキーも手伝ってくれよ。どうせ今すぐ食える状態じゃねぇし。」
「あ、ハイ。」
僕は快く引き受けた。目が回る程忙しいシフォンさんを少しでも助けてあげたいから…。
…という事で僕はウェイターをする事に。
いつも食堂のお手伝いしてるから楽かと思ったけど…、こっちの方が断然ハード!!
お客さんの入れ替わりが早いから早くお皿を片付けないといけないし、一度に覚える量もハンパじゃないし…。
これを一人でやるなんて…、シフォンさん倒れる訳だよ…;;
夕方になるとやっと空席が目立ってきた。
シフォンさんも一段落ついたのか、カウンターに現れた。
「プリンさんもクッキー君もお疲れ様でした。お礼にこんな洋菓子はどうですか?」
シフォンさんが出した洋菓子は、赤紫のソースの上に生クリームを纏った緑のスポンジ。その上に赤い実が飾られていた。
「ノワーを表してんのか。」
プリンさんは一口放り込んだ。
「…ん、美味い!」
僕も一口頂く。
「あ…、美味しいです!」
シフォンさんは幸せそうに微笑んだ。
「異世界の洋菓子に挑戦したんですが…、良かったです…。」
シフォンさんの笑顔を見て微笑むプリンさんを見ると、僕は幸せな気分になった。
シフォンさんは幸せを繋ぐ魔法の手を持ってるんだ…。
後日、プリンさんの口コミでそのケーキはノワーの名物になったとか…。
忙しくするシフォンさんが容易に想像出来るよ…;;
END
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