ノワーの明るい闇

 

平和な町ノワーに闇が降りたのは約一月前。

本人曰く、『人間になりたい』とこの町へ来たらしい。

そいつの名前は『ラスク』。

俺が天界に居た時に森の奥に隔離されていたといわれる邪神の一人だ。

様々な神がいるが、ラスクは破滅の神。

だからこそ最初は信じる事が出来なかったけど、今は少し信じられる。

今のラスクは人間になる為に必要な信頼を集める為に奮闘する、神の姿をした少年だから…。

 

「ビスキー、仕事は無いか?」

信頼を得る為にラスクは週に一度、俺の仕事を手伝いに来る。

俺の仕事はよろず屋。

配達や探索が主で、お客様に応えられるように尽す。

ラスクから見れば、俺の信頼とお客様の信頼をまとめて得られる、とっておきの仕事なんだろう。

俺も出来るだけラスクが多くの信頼を獲得出来るように、仕事を探してやる。

「じゃあ、花の配達を3か所と、ノワー近辺の香草の調達を頼む。」

「分かった。」

しかし、時々俺は疑問に思う。

人間になれば大量の魔力を失う事になる。

おまけに寿命も比べ物にならない程短くなってしまう。

それなのに、何でラスクは人間の道へ進みたがるんだろう…?

 

「…終わった。」

「お疲れさん。」

信頼をそこそこ得る事が出来たのか、満足そうな顔をしている。

「待ってな。ビタティー入れるから。」

俺は珈琲みたいなドリンク『ビタティー』をカップに注いだ。

そして、俺はあの時の疑問をぶつけてみる事にした。

「何でお前は人間になりたがるんだ?」

ラスクは真っ黒なビタティーに視線を落として静かに話しだした。

「…邪神は嫌われる存在だ。それから逃げたかったのが第一にある。

あとは…、短い時をどこまで幸せに生きていけるのか、少ない魔力でいかに人を幸せに出来るのか…。

それを確かめて命を終えたいんだ…。」

「まるでゲームみたいだな。」

ラスクは首を横に振った。

「人間は一生掛っても分からない生き物だ。それを自分の命で解き明かしていきたいんだ…。ただそれだけだ…。」

ラスクの目は、どこか遠くを見ているようだった。

「…『幸せ』に、永い命は必要無いのかもしれない…。」

ラスクはうわ言のように呟いた。

その言葉が、俺の心に低い音で深くに響いた。

不幸であった故に、短命ながら幸せそうな人間に興味を持ったのかもしれない。

だが、だからといって人間になろうとするだろうか?

俺には出来ない。

俺はラスクの覚悟を再確認した。

 

END

 

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