ノワーの淡い光の親子
「…ありがとうございました。」
今日は武装した兵士が回復の効果のある魔法石を、
上級魔導師が上級攻撃魔法のスキルを買い占めた為珍しく品薄状態となってしまった。
…近くで戦争でも始まったんだろうか…。
この近辺はプリンやビスキーが採取に出掛けたりするから心配だな…。
とにかく、品薄状態では商売にならない。
俺は早めに店を閉め、商品の量産の為に部屋に籠った。
商品は品質が命。
100%俺の魔力でスキルを作る。
…一応、超上級魔術師の息子だから、質だけはいい筈。
だが、質がいいと今度は量が必要になってくるのが商売。
…だから俺は毎回量産の時は命がけで生産する。
…そう…命が危険な程…魔力を消費す…る…から…。
………………。
…何かが脈打って流れてくる…。
…懐かしくて…それでいて嫌な感じ…。
…でも…それはとてもぬるいけども…、温もりがあった…ような気がする…。
目が覚めると、俺は温かな布団にくるまっていた。
酷い頭痛と吐気で、頭を起こしただけでまたベッドに倒れた。
「…やっと気が付いたか馬鹿息子が。」
低い声に俺はビクッと震えた。
…親父だ…!!
親父はいつも宮廷魔術師として、俺と離れて住んでいる。
「…魔力が尽きると死ぬ事を知ってるな?」
「……知ってる……。」
「だったら何故倒れる程魔力を使った?!」
親父の怒声が頭に響いた。
「お前は生まれつき魔力を蓄える容量が少ない。それはお前も分かっている筈だ。」
冷たい視線が俺の胸をえぐるように刺さった。
「…そんな自殺行為を繰り返すならば…、やめてしまえ。こんな店…。」
俺は親父に向かって身を乗り出して怒鳴った。
「誰がやめるか!!この商売は遊びなんかじゃない!!命を滅ぼし、命を再生する力を売ってるんだ!!
…親父の息子ってのは気に入らないけど…、そんな魔法が好きだから、俺はこの商売に命をかける!!」
強烈な眩暈に俺はズルズルと床へ倒れた。
あまりの苦しさに息が上がった。
そんな俺を親父は軽々と抱き上げて再びベッドへ寝かせた。
「…頑固な所だけは私にそっくりだな…。」
頭をフワリと撫でられ、少しだけ心をほぐされた。
「…とにかく、魔力を考えて生産しろ。…私はもう帰るからな。あと3日は休む事だ。」
…何だよ。
変に優しい言葉かけて帰って…。
俺があんな言葉聞いて平気でいられる訳無いのに…。
「…切なくなるだろが馬鹿親父…。」
END
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