3時のノワー

 

午後3時はティータイム。

ほとんどの家の煙突から煙が上り、ビタティーやルナティーの香りに包まれる。

そして、静かな古城も、奴のせいで少しだけ賑やかになっていた。

 

「どーだ?カヌレ。こうやってティーパーティーするのも悪くないだろ?」

カヌレはベッドの上で上半身を起こして座っている。

「……そう…だな……。」

俺はビタティーのストレートを飲みながらカヌレの様子をうかがっていた。

カヌレをよく知る者同士のティーパーティー。

今この部屋には、カヌレと俺とビスキーとクレープがいる。

キャスター付きのテーブルに並ぶのは、シフォンの店で買った香草のソフトクッキーと、チョコレートの詰め合わせだ。

「ほら、ラスクもビスキー坊やも遠慮せず食えって。」

「お前は少し遠慮しろ!…ったく…。」

ブツブツ言いながらもビスキーはナッツチョコを口に運んだ。

俺もソフトクッキーに手を伸ばした。

すると同じくソフトクッキーを食べようとしたカヌレと手が触れた。

「「あ。」」

細い指の感触に驚き、俺は手を退いた。

カヌレも慌てて手を退く。

「……ラスク…先に取れ……。」

「いや、カヌレが先に取ればいい。」

カヌレは退いた手をそっと伸ばして、手探りでソフトクッキーを二枚取り、その内の一枚を俺の方へ差し出した。

「……受け取れ……。」

俺がそれを受け取ると、カヌレの長い前髪の間から弓のように両端をつり上げたカヌレの口が見えた。

その様子に俺達は微笑んだ。

同時に、俺の中では救われたような気がした。

カヌレは長い時間苦しみ、長い間自分なりの幸せや楽しみを模索していた。

そんなカヌレにクレープとビスキーが考え出したのがティーパーティーだった。

窓辺にはパフェの花屋で買った香りを強く放つ花を飾り、テーブルにシフォンの店で買った菓子を並べる。

別に弾む程の会話は無いが、誰かと同じ時間を共有する事が、今のカヌレを少しでも前向きにする要素だと思ったんだろう。

実際にカヌレはこのティーパーティーを楽しんでいるし、この時が来るのを楽しみにしている。

 

ティーパーティーを終える時、カヌレは嬉しそうに呟いた。

「……皆の気が…楽しそうで…良かった……。」

クレープはニッと笑った。

「そっか。じゃあ、今度も楽しくやろうな♪」

カヌレは強く頷いた。

生き続ける目的を見つけたカヌレが、とても輝いて見えた。

俺は…どうなんだろうか…?

 

END

 

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