部長の課題
「お前達には特別メニューをこなしてもらう。」
そう言って部長は僕とユーリヒを呼んだ。
部長が持ってるのはいつも使ってるケージボール用のボールだ。
「互いの得意なやり方でキャッチボールをするんだ。ユーリヒなら手、夏月(カヅキ)なら足だな。」
なるほどね。ユーリヒが投げたボールを蹴りで返したらいーんだ。
「分かった。ユーリヒ、あっちで練習しよ。」
僕はユーリヒの腕を引っ張ってケージボールのケージ゙に入った。
「じゃあユーリヒ、おもいっきり投げてよ。」
ユーリヒにボールを渡すと、ユーリヒは少しやりにくそうに投げた。
素人が見れば豪速球に見える球だけど、足で受け止めて分かった。
ユーリヒの本気の球じゃない。
いつもはもっと、胸で受け止めるのが苦しいぐらいの強くて速い球なのに、今の球はそれに比べてヘナチョコだ。
「どーしたのユーリヒ〜?本気出してよ〜。」
だけどユーリヒは首を横に振った。
「ホンキ出したら…、カヅキが壊れる。」
そう言ってうつ向いた。
「じゃあ、ちょっと待ってて!」
僕は倉庫から試合用のプロテクターを着けてユーリヒの元へ戻った。
「これなら僕が壊れる心配は無いよ!さ、スッゴイの投げてきてよ!全部蹴り返してやんだから!!」
ユーリヒもようやく頷いて、いつもの調子を取り戻した。
腕が空気を切り裂くような音がして、さっきとは比べ物にならない程の豪速球が放たれた。
構えて足で受け止めると、痛みがジーンとくるのを感じた。
…やっぱりユーリヒはこうでなきゃ!
僕も負けずにボールを力一杯蹴った。
ユーリヒが受け止めると、パシンといい音が響いた。
「カヅキ!もっと強くてもダイジョウブだ!」
的確なアドバイスをユーリヒがくれる。
僕もそれに応えるし、アドバイスをする。
『大舞台の壁』と呼ばれる僕等にとって、ディフェンスは重要な役目。
僕等は力一杯練習をした。
「ね、部長。」
「何だ?」
「特別メニュー、なかなかの選択だと思いますよ?」
「…そうか。」
「俺の特別メニューは無いの?」
「あった方がいいか?」
「だって、上を目指したいし。」
「これ以上上を目指すのか?」
「これ以上って、俺、部長越してないし。」
「俺は越して欲しくはないな。」
「何で?」
「可愛い弟分のままでいて欲しいからだ。」
「あ…、何かそれズルいな。」
END
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