ノワーの宿屋

 

今日は朝からずっとラスクさんが宿屋のお手伝いをしてくれた。

お客さんが多かったからか、少しフラフラしてるみたい…。

「ラスクさん、大丈夫ですか?」

「さ…流石に少し疲れたな…。」

ラスクさんは掃除していた個室のベッドに倒れ込んだ。

「お、お水とか何か持って来ましょうか…?」

「いや…、すぐに落ち着く…。」

ラスクさんは布団に顔を埋め、布団の温もりと戯れているようだった。

…とても幸せそうだけど…、

「あの…ちゃんと綺麗に直してくださいね?」

「ん…分かっている。…あったかいな…。」

僕もラスクさんの横に座って休憩する事にした。

「…今日はどれだけの信頼が集まっただろうな…。」

うわ言のようにポツリとラスクさんは呟いた。

ラスクさんは人間になる為には信頼が沢山必要だって言っていた。

邪神だから普通よりもっと信頼が必要なんだって教えてくれた。

そして、その信頼を集める為に皆のお仕事を手伝っているんだって言っていた。

でも、僕は疑問に思う。

信頼はお手伝いしないと集まらないものなのかな…、と。

確かに、何もしないよりかは集まるだろうけど、信頼を集めるのに必死で、

ラスクさんは大切な事を忘れてしまってる気がする。

僕はあなたがこの町に居てくれるだけで、安心して沢山の信頼をあげるのに…。

「…ラスクさん」

「ぅん…?」

「僕は、ラスクさんの事、お手伝いしてくれなくても信頼してますよ。」

ラスクさんは邪神だと言うけど、全くそんな風に見えないくらい優しい。

それを僕達は分かってるから、お手伝いをしてくれなくても信頼出来る。

ラスクさんは苦笑した。

「…人間は分からないな…。

報酬を求めたり与えたりする生き物なのに、信頼は無償でくれるんだな…。」

ラスクさんは僕を布団ごと抱き締めた。

「信頼を無償でくれるのは分かった。

だが、俺は何もしない訳にはいかない。

無償で信頼をくれる感謝を込めて、俺は皆の仕事を助ける。」

…きっとラスクさんは何もしない事が嫌いな、真っ直ぐな神様なんだろう。

何故そんな神様が邪神なのか、僕は不思議でたまらない。

「…はい。これからも僕達を助けてくださいね。」

 

…僕達を助けてくれる優しい邪神の彼に、神様の神様がいるのならば、

多大な幸福と人間になる為の力をお与えください…。

 

僕は彼の事が大好きだから…。

 

END

 

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