東西コンビは恋愛途上

 

…俺、喋るの怖い。

声の印象とか、喋り方とか、結構見られるから。

だから声に出さない。

ずっと、いつだって俺は逃げてたんだ…。

「太郎、一緒に帰ろ。」

暮幸は…、俺の声聞いたらどう思うんだろう…?

 

暮幸と一緒に帰る時、よく暮幸の家に寄り道する。

玄関で学校で話せなかった事を色々話すだけだけど。

「なぁ、太郎は何で声出して喋らないんだ?」

いつかは聞かれると思っていた問いを、こんなに早く聞くことになるなんて思わなかった…。

まだどう理由を言おうか考えていなかったのに…。

「…もしかして…、聞いちゃマズかった?」

俺は慌てて首を横に振った。

大事な友達だし…、暮幸の事…。

俺は決心して口を開いた。

『…喋るのが怖いから…。』

「怖い?」

暮幸は首を傾げた。

『言葉で人を傷付けそうだし…、声…変だから…。』

暮幸は難しそうな顔をしたが、すぐにフワッと優しい笑顔になった。

「確に言葉で人は傷付く時もあるけど、それだけがすべてじゃないだろ?

そういう良いのも悪いのもひっくるめて受け入れるのが友達じゃん。」

『でも…。』

口を閉ざした俺に、暮幸はとんでもない事を言い出した。

「なぁ、声出してみてくんないかな?」

俺は激しく首を横に振って拒否した。

「大丈夫だって。小声でもいいからさぁ…。な?」

このままずっと拒んでいたら、やっぱり暮幸もガッカリするし、嫌いになるかもしれない…。

嫌われたくない一心で俺は頷いた。

「じゃあ、耳元で。」

俺はカラカラの喉を唾液で濡らして、大きなドアを叩くように大きく鳴り響く胸の鼓動を押さえながら、唇を耳元へ近付けた。

そして小声で「暮幸」と名前を呼んだ。

震えた高い声が玄関に響いて、小声の筈なのに大きく聞こえた。

「…ん。ちゃんと聞こえた。」

微笑む暮幸に少し安堵した。

「綺麗な声だった。口パクがもったいないぐらい。」

…初めて言われた。

いつも『女みたい』とか『オカマ』とか言われていた声を『綺麗』と言われて、少し目が潤んだ。

「よし!これから太郎に声出す練習してやるよ!」

『えぇっ…!?』

声を出すのはまだまだ抵抗があるけど、暮幸が教えてくれるなら…。

でも、きっと暮幸にはこんな気持ち芽生えてない。

好きだって事…。

この気持ちは、一方的な片思い。

「じゃ、明日から頑張ろうな!」

俺の気持ちを知らずに微笑む暮幸に、俺も微笑み返した。

 

END

 

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