東西コンビに春の影

 

太郎と毎日何でもない事を話す。

太郎はたまに俺に、『楽しいのか?』と尋ねてくる。

俺は素直に頷いて答える。

少しずつ声を出すようになったけど、やっぱりまだ口パクが多い太郎は、

いつも一緒にいる自分が鬱陶しく思われてないか不安みたいだ。

でも、俺はそんな事思わない。

少しずつ声を出す事が増えてきた太郎の成長を、今では父親の気分で見守っている。

可愛いんだもんなぁ…、太郎。

「…暮幸が楽しいなら…いい。俺も楽しいから…。」

長い時間声を出して喋る事が出来たから、俺は太郎の頭をクシャクシャと撫でてやった。

「……暮幸……。」

顔を赤くして固まる太郎が更に可愛くて、俺は華奢な太郎の体を抱き締めた。

 

翌日、太郎と昼食を食べていると、隣のクラスの女子がこっちに向かって歩いてきた。

「東君、今いい?」

俺は素早く目線を太郎に送って確認した。

太郎は頷いてくれた。

「いいよ。何?」

「私と付き合って欲しいの。」

太郎は目を丸くして箸を落とした。

「…何で?」

落とした箸を拾ってやると太郎は我に返った。

女子は当然!といった口調で話す。

「決まってるでしょ。東君が好きだからよ。」

俺の視線が女子と太郎を行き来していたが、その言葉で心は決まった。

「悪いけど、君の事好きになれない。」

勝気な女子の顔が崩れた。

「何で?!私、本当に好きなのよ?!」

「うん。分かってるけど駄目。俺の好みも知らないんじゃね…。」

俺は立ち上がって、太郎の手を引いて立ち上がらせた。

「太郎、行こう。」

太郎は頷いた。

だが、女子もまだ諦めて無かったみたいだ。

「じゃあ、東君の好みって何よ!?」

太郎も俺の背中へ向けて視線で問掛ける。

俺はフッと笑って答えた。

「好きな人の前だと顔を真っ赤にしてしまうような子。…ね?君には無いだろ?」

女子は言い返せなくなって黙りこんだ。

…ゴメンね。

 

放課後、いつものように太郎と帰ろうとしたら、大勢の女子に囲まれた。

皆顔が赤い。

「「「東君、付き合って(ください)!!!」」」

…なるほど。俺の好みを知ってるって事は、あの女子の仕業だろう。

俺は微笑んでスッパリ切り捨てた。

「顔スッピンにして1時間経ったら考えてあげる。」

固まる女子達を放って俺は太郎と学校を出ていった。

 

『…暮幸。』

「ん?」

『好きな奴いるのか…?』

「うん。」

太郎の表情が少し曇った。

 

END…?

 

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