東西コンビの春

 

…最近、暮幸と話す回数が減った。

『好きな奴がいる』って聞いてから、俺の心が空っぽになったような気分だ。

暮幸と別々に帰る事は無いけど、暮幸の家に寄り道しなくなった。

…俺は、また口パクに戻っていた。

 

今日も帰りは暮幸と一緒。

でも、会話は何も無い。

暮幸はずっと俺の顔を見るだけ。俺が話すのをずっと待っている。

…もう暮幸の家の前。

俺は『じゃあ…』と言って別れるつもりだったが、それを暮幸に阻止された。

暮幸が俺の手を掴んで家へと引きずり込んだ。

「暮幸…!!」

「どうしても話がしたいんだ…。」

俺は玄関を通り過ぎ、初めて居間に入った。

暮幸は黙ったままの俺に尋ねてきた。

「何で喋らなくなったんだ?」

俺は呟くように答えた。

「…暮幸に好きな奴がいるって言うから…。」

「は?」

暮幸は目を丸くした。

「俺だって暮幸好きなのに、…好きな奴がいるって言うから…。」

「もしかして、嫉妬して口きかなかったとか?」

暮幸の問いに「違う」と否定した。

「好きな奴がいるなら…、退いた方がいいと思って…。」

すると暮幸は腹を抱えて笑いだした。

…こんなに爆笑されたの、小3の時以来だ…。

「俺、太郎の事言ってたのに。気付いてなかったんだ?」

「…………。」

俺の思考も意識も停止したのは言うまでもない。

 

あれから、俺と暮幸の間に会話が戻った。

教室でも会話する回数が増えて、それをキッカケに暮幸以外の友達が出来た。

その友達が言うには、「表情が明るくなった」…らしい。

今は昼休みは、友達と暮幸とで弁当を食べる。

おかずを取られたり、逆に取ったり、馬鹿馬鹿しいやりとりをしている。

中学時代では無かった自分を見つけだしたその喜びを、なんとなくだが感じていた。

帰りはというと…、

「東君〜!!」

という女子の黄色い声に混ざって、

「西風(君)〜!!」

という男子と女子の声が聞こえてくる。

…何で俺だけ男子も…;;

俺達の仲はまだ知られていないが、名前と勉強面ですっかり有名人になってしまった俺達は、

毎日取り巻きに頭を抱えながら登下校している。

そして、いつものように暮幸の家で話をする。

 

やっと訪れた穏やかな日々。

だが、それは一週間ほどの事で、新たな嵐が俺と暮幸を巻き込む事になる。

 

END

 

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