東西コンビが屋根の下
「暮幸…、しばらく家に泊めてくれ。」
帰り道、突然の太郎の頼みに、俺は電柱に頭をぶつけた。
「し…、しばらく…って、何日ぐらい?」
「…親父が頭を下げに来るまで。」
それって半永久的って事だよな…?
確かに俺達はやっと誤解が解けて両思いになれたけど…、同居にはちと早すぎないか…?
「ま、まずは家で理由聞かせてくれない?」
太郎の雰囲気はいつものクールな雰囲気でなく、苛立っているような雰囲気でピリピリしている。
俺達は会話を交す事も無く、俺の家に移動した。
落ち着くようにハーブティーを出してやると、太郎は一口飲んだ。
「…で…、何で家出した訳?」
落ち着いた太郎は暗い表情で話しだした。
「…親が勝手に決めた婚約者が、家に住む事になったんだ…。」
…コ・ン・ヤ・ク・シャ…?
「何だってー?!!!」
「暮幸、今度はお前が落ち着け。」
太郎はお茶菓子のクッキーを俺の口に詰めた。
……喋れません。
「相手は大企業の御曹司で次期社長。学校も字原の隣のエリート校『ユピテル学園』だ。
…で、その社長息子が俺に一目惚れして、相手側も俺の親も賛成してて…、もう逃げるしか無くて…。」
なるほど…。そりゃ大変だな…。
……ん……?
「息子!?相手も男!?」
「そう言うお前も男だぞ、暮幸。」
よく両親OKしたな…;;
…いや、金目的…かな。
なんにしろ、このままでは太郎が可哀想だ。
好きでもない奴と付き合うなんて、俺だってゴメンだ。
「分かった。泊めたげる。どうせ兄貴も即OKくれるし、今から買い出しに行こう。」
「え…?兄貴って…?」
「俺、兄貴の一人暮らしが心配でここ住んでんだ。兄貴、世間知らずだから。」
「だーれが世間知らずだコラ。」
げ。
…この声は…、…兄貴…?!
恐る恐る振り返ると、仁王立ちの兄貴がいた。
「兄貴、補習は…」
「サボった。それより、俺の居ない間に女連れ込むなんざ100万年早ェんだよ。」
女…?
「…もしかして太郎の事?」
「は?!コイツ女じゃねぇの?!」
俺は太郎の事と事情を兄貴に詳しく説明する事になった。
「…ふーん、そりゃ大変だな。だが安心しろ。俺達で守ってやるよ。」
太郎は深々と頭を下げた。
「まぁ、夜は俺に気を付けな。…なんてな♪」
…あー、兄貴の方が危険だったかなー…。
とにかく、3人の同居生活が始まった。
不安はあれこれ沢山あるけど…。
END
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