オセロの囁き

 

俺の幸福はたった一つ。

アンタと何でもいいから繋がる事。

 

朝、ひんやりとした背中に不安を感じて目が覚めた。

起き上がって辺りを見回すと、その不安は消え去った。

純白がいつものようにパソコンと向き合っていたから…。

純白と付き合い始めてまだ二週間。

未遂はあったけども、俺達はまだ清い関係でいる。

…純白と目が合った。

「漆黒…?」

純白は最上級白位っていう白羽の中でも一番偉い階級の白羽。

俺は…元白羽の殺人鬼…ってトコかな…?

まだ赤ん坊の頃に羽を黒く塗られて、嫌われたり冷やかされたり怖がられたりしたから…、そいつら全部殺ったんだ…。

今は殺らない。もう内側は聖水で浄化されたから。

結構無理した部分があって死にかけたけど、今は副作用も何も無いから、まぁ、良かったのかな。

羽は…もう黒が落ちないから黒のままだけど…。

「どうかしたか?」

純白が作業していた手を止めてこっちに来た。

「…何でもないから早く仕事終わらせろよ。」

「何だそれは。」

早く構ってもらいたくて少し口が悪くなる。

純白の仕事は保護したまだ浄化の済んでない黒羽のスケジュール管理。

一日に飲む聖水の量が多すぎると死ぬ事もあるから、純白が毎朝スケジュールを作って、黒羽を世話をする白羽に伝える。

「待っていろ。あと一人で終りだ。」

「1分で済ませる事。」

純白は苦笑して俺の頭をポンポンと撫でた。

 

「…終わったぞ。」

「遅いっ!!!1分って言ったのに、1時間も掛ってっし!!」

俺は軽いパンチを食らわせた。

それを受け止めながら純白は溜め息をついた。

「人の命を預かっているんだぞ?慎重になるのは仕方ないだろう?」

「でもっ…!!」

「思い出せ。お前のスケジュールを組むのに何時間掛ったと思ってるんだ?墨の情報が無ければ今のお前は無かったんだぞ?」

「…………。」

それを言われると弱い。

純白が浄化の時に色々助けてくれたのは事実だし、殺人鬼以外の情報が無かったのも事実だから、スケジュール組むのに時間掛っても仕方ない。

「…ゴメンナサイ…。」

「いや…、少し責め過ぎたな。」

俺の細い体を純白は軽々と抱き上げて膝の上に座らせた。

「今日はもう仕事無いよね?」

「あぁ。」

俺は満面の笑みを浮かべた。

「じゃあさ…、繋がろ?」

俺は純白と手を絡めた。

 

ほーら、繋った…。

 

END

 

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