オセロの償い
今日は天気がいいし、体も鈍ってきたから、空の散歩でもしようと俺は窓に足をかけた。
すると、遠くに飛んでいく淡い青の翼が目に映った。
白群だ。
手には見たことのない花を握り締めている。
俺は声を掛けようと窓から飛び出した。
少し速さを意識して飛べばすぐに追い付いた。
「白群、どこか行くの?」
白群の表情は暗いが、しっかりした口調で答えた。
「墓参りだ。…黒羽のな…。」
「黒羽の…。」
俺はそれ以上は何も言わず、白群と平行になるようついていった。
着いた場所は黒羽の領地に一番近い場所。
国境みたいな壁は無いけど、ここへ来ると白羽も黒羽も少し体が静電気みたいな痛みをピリピリ感じる。
その場所に小さな岩があって、名前らしい文字が刻まれていた。
白群は花を添えると話しだした。
「…昔な、タールっていう黒羽がいたんだ…。いつも独りで、俺が世話しなくてもいいぐらい白羽の言うことを忠実に守ってた。」
白群の声が鼻にかかったような声になった。
でも、まだ涙は堪えている。
「…だがな、ほんの少し聖水を飲む量を間違えただけなのに、アイツは急に大量の血を吐き出した。
それを見ていながら、俺はアイツを抱き締めてやる事しか出来なかった…。…アイツが言うんだ…。『助けてくれ』ってな…。」
添えた花に白群の堪えきれなかった涙が弾けた。
「何も助けを借りなかったアイツが最期にやっと助けを求めたんだっ…!!…なのに…俺は助けられなかった…!!」
ガクンと膝を折り、白群は岩…否、墓にすがりついて声をあげて泣いた。
俺は泣きじゃくる白群の背中に抱きついた。
下手に声を掛けるより、黙って同じ悲しみを感じる事が、白群にとって慰めになるのを知ってるから…。
白群が落ち着きを取り戻したのを見計らって俺は聞いてみた。
「だからなんだ?俺が死にかけた時、必死になってくれたの。」
白群は涙を袖で拭いながら頷いた。
「お前とタールが重なって見えたから…。…また何も出来なかったけどな…。」
俺はフルフルと首を横に振った。
「あの時『死ぬな』って言ってくれて、嬉しかったんだ。俺の事思ってくれてんだなぁ…って。
タールは死んだけど、俺と同じ気持ちだったと思うよ…?」
白群はまた溢れそうな涙を堪えて、
「…そうだといいがな…。」
と消え入るような声で答えた。
俺は墓に静かに手を合わせた。
「今度は花を持ってくるから…。」
今は…安らかに…。
END
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