部長と中1と高1

 

割と独りが好きなんやけど、可愛い後輩と一緒に居るのも、悪くないとは思うんや…。

 

「初村(ウイムラ)先輩、部長と中庭で昼飯なんスけど、一緒にどうッスか?」

「…何で?」

「え?だって、先輩いつも一人で食べてるから…。」

同じクラスメイトやけど年齢的には後輩な歩澄。

思えば、大舞台に歩澄が来て、助けた時から親しく俺に接してくれとった。

「…歩澄が良いんなら…。」

「じゃあ、早く行かなきゃ!」

歩澄が俺の腕をグンッと引っ張った。

「ちょっ…、歩澄!腕千切れるがなっ!!」

いつもは標準語の口調が、ついつい地の関西弁になってしまう。

「昼休みは短いんだから!」

この少し無理矢理な誘いは今日で7回目。

いつからかそれにも慣れた。少しだけ、楽しみにも思える。

 

中庭には部長がベンチに座っていた。

食べずに歩澄を待っていたらしい。弁当の包みを開けてもいない。

「部長!」

歩澄が声を掛けると、部長は視線だけ送った。

「初村も一緒か。」

「一緒に食べたいって。」

…言うた覚えはアリマセンが…;;

「そうか。」

部長は弁当の包みを開いた。俺も弁当の箱を開けた。

「やっぱりこうやって誰かと一緒に食べるのって楽しいから好きだな。」

俺は静かに弁当を食べる。

日の丸弁当に毛が生えた程度の自作弁当。唯一楽しみなのは、得意の唐揚げ。

「初村先輩の唐揚げ美味しそう…。」

歩澄の目はキラキラと輝いている。

「…部長のお母さんの唐揚げとトレードしません?」

…ほら、交渉に出た。

確に唐揚げの数は3つだから、1つあげたって問題は無い。

「…1つだけやで。」

俺は唐揚げを歩澄の弁当箱に落とした。歩澄も唐揚げを俺の弁当箱に入れた。

…これが部長のオカンの唐揚げ…。

…オカンか…。

俺は唐揚げを口に放り込んだ。

「…美味しい…。」

やっぱ…オカンの味っていくつになっても美味しいわ…。

「部長!ヤバイッス!!初村先輩の唐揚げ、凄く美味いッス!!」

歩澄は勝手に俺の唐揚げを部長の弁当箱に放り込んだ。

部長はじっと唐揚げを見つめ、静かに口に運んだ。

「……ん。美味いな。」

部長の口の両端が僅かにつり上がった。

 

歩澄が思い出さしてくれたオカンとの思い出が、ぼやけてやけど浮かんでくる。

どないしとんのかな…、オカン…。

俺は片付ける二人に聞いた。

「…また、昼飯一緒でもえぇか…?」

二人はしっかりと頷いてくれた。

 

END

 

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