部長の俺

 

俺は部長が好きだ。

いつも言ってる。何度も言ってる。

でもいつも怒られる。

『本当に好きなら軽々しく言うな』って。

じゃあ…、いつ言えばいいのさ…。

俺のこの行き場の無い伝えたい言葉はどうすればいいのさ…。

もう喉まで部長の思いでいっぱいなのに…。

…俺、こんな乙女だっけ?

あー…、きっとこのせいだ。

 

熱のせい。

 

部長のお母さんの文子さんがずっとつきっきりで看てくれてる。

文子さんは林檎を剥きながら愚痴った。

「幸ったら酷いのよ?歩澄ちゃんが熱だから部活を休んで看病してあげたらいいのに、

『部長だから』っていつも通りに行っちゃったのよ?」

俺は苦笑しながらその話を聞いている。

それが部長『大公 幸路』だから。

それに、俺一人の為に遅れをとる訳にはいかないから。

文子さんは俺にウサギ林檎を渡しながら尋ねた。

「歩澄ちゃん、寂しくない?」

俺はウサギ林檎をかじりながら頷いた。

慣れてる。寂しい事なんかには。

でも、寂しいかもしれない…。

でないと、思いで喉が詰まったりなんかしないから。

「…歩澄ちゃんは我慢強いのね。」

文子さんはチラッと壁掛け時計を見上げた。

時計は17時を指していた。

「あら、そろそろ夕御飯の準備をしなきゃ。じゃあ歩澄ちゃん、ゆっくりお休みなさい。」

「うん…。ありがとう文子さん。」

文子さんが部屋から出ていき、静かすぎる時間が続いた。

何度も寝返りをうって時間を潰すけど、それでも5分が限界だった。

「幸路…。」

俺の瞼がゆっくりと閉じていった。

部長の早い帰りを願いながら…。

 

ガチャッとドアが開く音で目を覚ました。

頭を撫でたその手で誰かすぐに分かった。

「幸路…?」

寝惚け眼でその手を捕まえた。

…やっぱり部長の手だ…。

「何か食べるか?」

「んーん…。今はこうしてたい…。」

部長の手を頬へ持っていった。

部長は黙って俺を見ている。

「…寂しかったか?」

文子さんの時と違って俺は答えなかった。

やっぱり寂しかったから。

「…そうか。」

何も答えてないのに部長は理解したみたいだ。

「今、何か愚痴る事があれば聞いてやるぞ。」

そう言われて俺は少し考えた。が、浮かんだのはこれだけだった。

「…やっぱり幸路が好き。」

どんなに寂しい思いをしても、俺は部長が大好きだ。

「大好き…。めちゃくちゃ好き…。」

「…俺も…、」

部長の口が小さく『好きだ』と動いた。

 

END

 

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