部長観察日記

 

今日も俺達は体力作りオンリーか…。

いい加減ボールに触れたいもんだな…。

 

えー、どうも。

非レギュラー部員の宮真(ミヤマ)です。

…皆、静かにしてくれよ?部長、今うたた寝してるから。

俺達の為に指導に駆け回ってる部長。きっと、疲れがドッと出たんだと思う。

何せ顧問が選手探しに出て、なかなか部活に顔を見せない。

その分が部長に回される訳だ。

「あれ〜?ユッキーってば寝ちゃってるんじゃない?」

真っ先に気付いたのは美田先輩だった。

その声に誰もが練習の手を止めた。

が、副部長の鈴助が手を2回ほど叩いて、皆に声を掛けた。

「そっと寝かせてあげてくれ。皆は練習を続けて!」

皆は渋々練習を再開させた。

俺もランニングを再開させたが、赤い影が鈴助の方へちょこまかと動くのに気付いた。

部長の恋人、時生だ。

時生は鈴助に何か話している。

それに対し鈴助は少し考え事をしてるようだったが頷いた。

時生は鈴助に一礼すると、嬉しそうな笑みを浮かべて部長の眠るベンチへ向かった。

まさか…、起こす気か…?

俺は走るスピードを少し落としながら、その様子を見ていた。

時生は部長の前で立ち止まり、部長の寝顔を眺めているようだった。

少し顔を赤らめた時生は、部長を起こさないようにゆっくりと前傾姿勢になり、顔を近付けた。

 

……それは明らかにキスだった。

 

いつもの生意気な顔が恥ずかしさで赤く染まって、なんとなく可愛く見える。

満足したのか時生は部長の隣に座り、部長の手を握って目を閉じた。

「…幸せ者め…。」

思わず声に出して言う程羨ましい二人。

俺はそんな気持ちを振り払う為に、走るスピードを上げた。

すると今度は部長が目を覚まし、隣で眠る時生に気付くと微笑んだ。

眠る時生を部長は軽々と抱き上げ、部室へと消えていった。

「あーあ、ラブラブだねぇ。うちの部長と新人君は!」

そう二人を見て感想をもらした美田先輩の顔は、少し呆れ顔だった。

鈴助も苦笑して、「今日はもう練習終わるか…。」と呟いた。

「美田先輩、来居呼んでくるんで、皆をまとめてくれますか?」

「OK〜。ホラ皆〜、特別に早く終わるから集まっといで〜!!」

「「「ハイ!!」」」

皆の返事はどこか嬉しそうだった。

「宮真、行くぞ。」

親友の葉竹(ハタケ)に声をかけられ、俺は頷いて先を行く葉竹の背を追い掛けた。

 

秋だというのに、あの二人の間にはいつも春風が吹いている。

 

END

 

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