部長の留守

 

【送信者】初村

【件名】初村です。

【本文】部長、お疲れ様です。

今日は部長が用事で休みやって、副部長を手助けせんとアカンと思って頑張ったんですけど…、…何でこないなったんだか…。

 

「今日は部長が居ない事だし、恋話で盛り上がるか?」

言い出したんは顧問の増田。

毎日ハードな練習が多かったからか、大半の部員はその提案に賛成した。

「…はぁ…。」

飛鳥河先輩は周りの空気を湿っぽくする程に溜め息をついとったけど…。

 

「そういえば時生は部長と上手くいってるか?」

「まぁまぁだけど…って、何で俺なんだよ!?」

歩澄、真っ直ぐやな…。歩澄はめちゃ顔を赤くして怒った。

部長と歩澄の仲は公にしてなかったんですか?

これで完璧部内公認になってまいましたよ。

…時間の問題だとは思っとったんですけど。

「アレか?ABCのどこまでいった?」

「…先生、古いわ…。」

思わずツッコミを入れてしもた。歩澄は分からないのか困惑しとる。

「あぁ、お子様だから知らないか。」

その言葉にカチンときたらしい。

「うっさいよ!じゃあ先生はどーなの!?好きなヤツいンの?」

増田は待ってましたとばかりに頷く。

「いるぞ。片想いだけどな。」

その視線が俺の視線とぶつかった。

勘の鋭い美田先輩はニンマリと笑った。

「へぇ〜♪先生楽人が好きなんだぁ?」

…一気に俺に視線が集中した。逃げたくても逃げられん状態です…。

部長…、部長やったらこんな場合どないするんですか…?

「楽人〜、センセってアホだけど、大人だからきっと少しは紳士だよ。いいじゃん、付き合っても♪」

「…人事やと思って…;;」

やけど、周りからは『付き合えオーラ』が溢れとって、とても断れそうな雰囲気ではない。

「……分かった。」

周りから「おぉ〜!!」と声が上がった。

そしてニヤリと笑う増田とまた視線がぶつかった。

 

…という訳で、増田と付き合う事なりました。

練習全員でサボってスンマセン。

明日はどんな練習でも文句言わんとやります。

 

【送信者】部長

【件名】Re:初村です。

【本文】…報告ご苦労。

まぁ……、頑張れ。

それしか言いようがないな…。

明日は少々ハードな練習にするか…。

先生も強制参加でな。

逃げないように縛り付けておいてくれ。

 

 

「…縛り付けようとして、逆に縛られた俺はどないしたらえぇんやろな…。」

 

END

 

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