無題…?

 

9月11日の放課後、俺は校門前で倒れた。

寒気がしてたから早く帰ろうとは思ってたが…、何で家に着くまで耐えてくれないんだか…。

「…大丈夫か?」

慌てて…ではないが俺を誰かが抱き起こす。

それは肩にシャーレを乗せた譜面だった。

その黒く塗り潰されたような瞳は珍しく真剣で、珍しく俺の体を心配していた。

「…ふ…め……ケホッ…!」

「喋るな…。盤羅に薬を貰おう…。」

あの時は熱に侵されて気付かなかったが、

譜面は俺をお姫様抱っこで保健室へ運んだらしい…。

そういえば…、譜面の冷えた白衣が俺の熱を奪って気持ち良かった…。

あの時の事はそれだけハッキリと覚えている…。

 

次に目が覚めた時には世界はガラリと変わり、俺の家になっていた。

しかも母さんが譜面から逃げられるよう俺に用意した家だった。

「…気が付いたか…?」

俺が起き上がろうとすると何かが乗っかっているのに気付く。

シャーレが俺の上に乗り、「にゅう〜v」と鳴いて俺に迫ってきた。

そこを譜面が抱き上げ、

「…シャーレ、相手は病人だ…。…めっ…。」

と言ってシャーレを優しく叱った。

シャーレも譜面には勝てないらしく渋々俺の上から降りた。

「お前も起きない方が良い…。熱が39度まであったんだ…。今は38度で留まっているが…。丸1日ずっと眠っていたんだぞ…?」

今更になって節々に痛みを感じた俺はベッドに沈んだ。

譜面の冷たい手が俺の額に触れる。

「…まだ高いな…。」

それから沈黙が訪れた。

丁度良いと思い、さっきまで思っていた質問を投げかけてみた。

「…何故…俺の…この家を知っていた…?」

「…前から知っていた…。お前が逃げて1週間後ぐらいにはもう知っていた…。

だが…、俺はお前を追い駆けようとは思わなかった…。」

「…何故…?」

譜面の前髪が揺れた時、隠れていた右目が数秒見えた。

左目の黒と違い少し濁っているが白い瞳…。

上を追い求め過ぎた研究者の傷…。

「…俺と一緒に居た時のお前と同じだ…。…嫌われるのが怖くなったから追わなかった…。」

俺の頭をそっと撫で、額に冷たい唇が当たった。

「…お前が俺に嫌われたくないが為に、必死に料理を作っていたのと同じだ…。」

俺の5本の指と譜面の5本の指が交差する。

譜面は少し声を潜め、優しく俺に話しかけた。

「…安心しろ…。俺はお前に好かれたい…。

指揮のように好かれようと…自分なりに努力するから…。

だから…、俺の腕から逃げるな…。」

覆い被さるように上半身を乗せる。

少し息苦しいが別に気にしない。

俺は苦笑して、

「…今の状況じゃ無理だ…。」

と答えた。風邪を引いて重い体、狂わせる熱。

加えて上半身に圧し掛かる譜面の体重。

絶対に俺は逃げられない。

「…好きになるから…、今日は添い寝してくれよ…?」

否、好きだから添い寝して欲しい。

だが、素直になれない俺はそんな事言えない。

それでも譜面は「あぁ」と頷いて俺の側に居てくれた。

俺は久しぶりに誰かと一緒に寝た。

たとえそれが無愛想で無感情な男でも、病で倒れた時に誰かが側に居て、一緒に寝てくれる事は、この年になっても嬉しかった…。

手を握り、同じベッドで体温を分け合う事が嬉しくて、俺は夜中にこっそり泣いてみたりした。

 

E N D

 

 

*コメント*

この日のタイトル、

『腐女子的想像力豊かな方はラザあゆと思って…(無理)』

でした。絶対無理だ…!!

だって個性ありすぎじゃないかこの2人!!

譜面Tの『…めっ…』に萌えた人間がここに1人。

アイズさんは絶対にやらないだろうなぁ…;;

ちなみにネットさんが譜面Tにしてもらった事、私がされたい事だったり…(無理だわ)

いや、添い寝だけでも叶いませんかね…?

特にネットさんみたいな人好みです…v(だから永遠に無理;;)

 

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