屋上弁当
サボリの溜まり場である屋上。
昼休みになるとシンと静まり返っている。が、俺はそこに来ていた。
大きな2段弁当箱と小さな弁当箱を持って…。
「あ、ネット〜、早く早く!」
伸博に手招きされ、俺は伸博の元へ向かった。
「あ〜も〜腹ペコ〜!!」
「腹ペコの割には賑やかだな…。…ホラ。」
俺はネットに大きな2段弁当箱を渡した。
伸博は早速弁当箱を開ける。
1段目は白飯。2段目は全部俺が作ったおかず。
昨日の晩飯の残りも入っているが、冷凍食品に頼ったりしない。
「わぁ〜♪美味そう〜Vv」
伸博は目を輝かせた。
「でも、お前の弁当箱小さいじゃん。そんなんで足りるのか?」
俺の弁当箱は小さい上2段弁当ではない。
半分に白飯、半分に伸博の分と似たようなおかずが入っている。
「足りるからこの箱なんだろうが…。」
「そりゃそうだけどさ〜;;お前そんなに小食だったか?」
「…分からない…。ただ…、あまり食欲が無いだけだ…。」
伸博は「ふ〜ん」と言い、おかずを口に放り込んだ。
「うま〜…v」
目を輝かせて俺に言う。
「大げさだな…;;」
「ンな事ねぇよ!すンげー美味いじゃん!!」
「…そうか…。」
俺は苦笑した。そして自分も作ったおかずを口に入れる。
…いつも通り…だろうか…。
「…なぁネット、」
「…ん…?」
顔を上げると伸博の表情は真剣だった。
「何か悩んでるんじゃないのか?」
『言ってみろ』と目が訴えている。
「…少しな…。くだらない話だ…。」
「くだらなくても言ってみろよ!力になれるかもしれないだろ!?」
伸博は俺にズズイと迫った。嫌でも言わせるつもりだろう。
俺はため息をついて降参した。
「…今…、譜面と住んでるんだが…、俺の作った料理を『不味い』と言って食わないんだ…。」
母さんと死ぬ前に籍を入れた譜面。
仕方なく暮らしてきたが、耐えられなかったのが飯時。
今まで『美味い』と言われてきた料理を『不味い』と言われるのは、俺にとって辛い事だった。
こっちは憎くても身体の事を思って作っているのに、1口食べて『不味い』は俺が1番傷付く言葉だ。
あれから食欲が落ちてあまり食べる気がしない。
自分の料理の腕さえ信じられなくなってきている。
「ネット、大丈夫だって。」
伸博は俺の腕を掴んだ。
「お前の料理はマジで美味いよ。譜面はきっとお前が嫌いだから意地悪言ってるだけなんだって。だからさ、この腕信じてあげなよ。」
優しく微笑み、俺の手を優しく撫でた。
「もし耐えられなくなったらさ、俺の所とか指揮の所に逃げたら良いよ。お前の味方だからさ…。な?」
ピリピリしていた気持ちが解れて涙が流れた。
俺の逃げ場所は…、こんなに近い所にある…。
俺の帰る場所は…、こんなに近い所にあった…。
「…あ…りが…と…。」
嗚咽で詰まりながら言葉を発する。
俺達以外誰も居ない屋上。
時間が俺の心を落ち着かせた。
「…ありがとう…。お陰で元気が出た…。」
伸博はへらりと笑った。
「良いんだよ。それよりさ、午後はサボって公園のアイス食べに行こうぜ♪」
「…良いのか…?ライブ近いだろ…?」
「大丈夫大丈夫!俺、勉強はダメだけどドラムは天才並みだから!」
いや…、俺が心配なのは和声の胃なんだが…;;
「…まぁ、お前なら少々ミスしても誤魔化せるだろうな。」
「だろ?だからちょっと時間見て抜け出そうぜ♪」
本人相当やる気のようだ。
…仕方ないな…。
「分かった…。いつものあの窓からだな?」
「おう!」
俺達は明日父さんに怒られるのを覚悟して学校から抜け出した。
E N D
*コメント*
うぅ…;;『×』はどこへ行ったの〜;;
これじゃあネット&伸博だよ〜;;
見方によっては伸博×ネットだし…;;
一応ネットが指揮Tの家に週3で行くようになる前の話です。
だから高1〜高2あたり…?
ネットさん実は泣き虫…?!
いえいえそんな事はありません…と言っても説得力無いなぁ…;;
でもそんな事無いんですよ〜?
あ、でも強がってはいますね。そこが可愛いんですが…v
なんだかんだ言って好きですね〜、私。
たとえ光君ばっかり描いてても好きなものは好きです。
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