温度 −Pattern2.生徒指導室−

 

「相変わらず酷いケガだな。」

消毒液を含んだ脱脂綿をポンポンと当てられる。

「…痛いって。もうちょっと優しく出来ない?」

生徒指導部長『十勝 風芽』。

この男に俺は惚れている。

一喝で不良を震え上がらせる事が出来るのは、校内で多分風芽ぐらいだと思う。

だけど、弱い者にはとても優しい。

「…これでもう大丈夫だ。よく我慢したな。」

我慢したご褒美のキスは俺だけのもの。

「…センセ、もう1回。」

俺がこんなに甘えられるのは風芽の前だから。

ネット先輩の前でも甘えるけど、風芽ほどじゃない。

風芽は親以上に俺に愛情をくれるから…。

「仕方ない子だな。」

苦笑して風芽は2度目のキスを俺に与えた。

「もう喧嘩すんじゃないぞ。」と付け加えて。

「馬鹿、何で喧嘩するか分かってるくせに。」

そう言って俺は頬を膨らませた。

相手は集団で喧嘩をふっかけてくる。

逃げられないし、不公平だし、こっちは無抵抗でされるがまま。

先輩だから余計暴力なんて振るえない。

いつもなら風芽が助けてくれるけど、大人って忙しい生き物だから、そうはいかない時もある。

だから俺は喧嘩する。

ボロボロで力の無い拳を振り上げる。

それで、やっと先生が来て助けてくれる。

あとはこの生徒指導室へ行くだけ。

風芽はそれを分かっているから、頬を膨らます俺を抱き締める。

「分かってる。意地悪言いました。ゴメンナサイ。」

「…今日の晩飯オムライス。」

「かしこまりました。」

棒読みのふざけた会話。その間に何度も交わされるキス。

会話は冗談でも、キスはホンモノ。

抱き締める風芽の優しさが、それを証明してくれた。

初めてここに来たあの時も…。

 

 

*いいわけ*

あ…、この最後書いてる途中で、

オムライスの話にしても良かったなーとか思った。

マリア=オムライスは外せない。

このまま裏〜な展開をにおわす終わり方にしても良かったんだけど…、ちょっと自信なかった。

 

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